
息子達の試合前に、女子チームの試合がありました。離れて観ていると、ボールがフィールドから出て、スローインの場面になりました。ディフェンスの選手が、ずいぶん長い距離の助走をとり、
普通にスローインすると思いきや予想外の動きに! あまりの、びっくりに、思わず身を乗り出して見てしまいました。
こちらが、そのスローイン場面。
しっかり、
ペナルティエリア内にボールが入る、驚きの飛距離です。Wikipediaでも
ユニークなスローインとして紹介されるこの投げ方。
なぜこのようなアクロバティックなスローインが、ボールの飛距離を伸ばすのでしょうか? 今日はその疑問に答えます。
スローインが遠くまで飛ぶわけ
2006年にSports Biomechanicsで発表されたスローインの飛距離を調べた研究(
Linthorne and Evertt, 2006)によると、ボールの飛距離には、2つの要素で決まります。その2つとは、ボールを離すときの角度(下の図のθ)とボールのバックスピン(ω)です。

飛距離を伸ばすベストな角度
ボールを投げたり蹴ったりする時、ボールを離す角度は、角度が大きいほど(つまり高くあげるほど)、飛距離が伸びるわけではありません。これは以前にも、
ゴールキックの飛距離に関する記事で書きましたが、ボールが高く上がると滞空時間は伸びますが、その分飛距離は短くなるからです。この研究では、横軸の30(度)のところで、飛距離が一番長く15m以上になります(図6の実線)。つまり、スローインでボールを遠くまで飛ばすには、角度が30度とかなり低い角度で飛ばす必要があります。

面白いのは、手でボールをもちボールを離すのが高くなるスローインと、ボールを地面に置きキックするゴールキックの場合では、最大飛距離の角度が変わること。スローインの場合は、最大飛距離の角度は30度であるのに対し、ゴールキックの場合は最大飛距離の角度は
45度です。ボールの高さによって、飛距離を稼ぐ角度が変わるんですね。
飛距離を伸ばすバックスピン
角度と飛距離の実験は、ボールに全くスピンがかからない場合で計算されてます。しかし、実際には、ボールにはスピンがかかります。そして、驚くことに、
ボールにバックスピンが少しかかると、ボールに浮力が働き、より飛距離が伸びるようです。
下の図は、ボールのバックスピンの回転数を変えて、飛距離を計算したものです。これによると、横軸のバックスピンが3 rev/s(1秒あたりの回転数)だと、スピンがない0の場合より、飛距離が1.2mも伸びます(図8の破線)。この数値がどの程度のスピンなのか、感覚的には全く分かりませんが、バックスピンを少しかけた方が、ボールの距離が長くなります。この研究では、最大に飛距離を出すバックスピンは5 rev/secと示しています。

まとめ
スローインは、ボールを離す時に、ボールを投げる角度を30度と低めにし、バックスピンの回転を一秒間に3~5回転させると、最も飛距離が伸びることが分かりました。
さて、冒頭で紹介した女の子の前転ロングスロー。驚くほど飛距離が伸び、ペナルティボックス内までボールが到達したわけですが、その理由は、
前転し体を回転することで、ボールにバックスピンをかけるので、ボールを遠くに飛ばすことができた、からです。さらに、ボールを離すタイミングを練習し、角度を低めの30度で投げるようにすれば、男子選手のパワーで飛ばすロングスローと同等に、ボールを効果的に飛ばせます。
前転ロングスローは誰でもできる?
こんなアクロバティックなロングスローインは、周囲がみんな驚いたほど、珍しいテクニックです。
アメリカの女の子は、ジムナスティックス(器械体操)をやっている子が多く、兄弟の試合を見学する小さい女の子達も、こぞってサッカー場で前転、バク転をやっています。もし、チーム内に器械体操をする子がいれば、こうしたスローインは手かもしれません。このチームでは、逆サイドも別の子が前転ロングスローをしていて、人材が豊富そうでした。ちなみに、息子のチームには、こんな芸当ができる選手は、、いなそうです。
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